鉄彩の大振りの深鉢です。

鉄彩とは赤土に鉄分を多く含む泥漿を塗り、透明釉を施したもののこと。その発色は概ね、緑味ないしは赤味を帯びた黒が中心です。

一方、この作品は非常に珍しい深い緑色を帯びた灰色を呈しています。また、通常は滑らかに焼きあがるはずの釉薬の表面は細かく泡立ち、すりガラスのような質感を持っています。

これらは皆、一度ガス窯で焼成したものを薪を使い蛇窯で再焼成したことにより偶然得られたものです。このような意図しない美しい焼き上がりのことを「窯変」と呼び、珍重します。

また、本作品は器としても傑出しています。重力から解き放たれたような小さな底からの立ち上がり。一旦たわみ、力を蓄え一気に口まで駆け上がるロクロ。

作りといい、焼きといい、二つとない逸品です。